上野の森美術館で開催されている『フェルメール展』に行ってきました。
今回の学び
- 入場待ちで時間をかけないためには、時間指定入場枠の後半に会場に行くがよし。
- 混雑した売店では、最前列では長時間考え込まないことがよし。
フェルメールの光の表現、とてもとても素敵でした。
フェルメール展
まずは展覧会情報です。
東京 上野の森美術館
2018年10月5日(金)~2019年2月3日(日)
大阪 大阪市立美術館
2019年2月16日(土)~5月12日(土)
チケット
<東京>
日時指定券(税込)
一般2,500円(2,700円)
大高生1,800(2,000円)
中小学生1,000円(1,200円)
※未就学児は無料
※障がい者手帳をお持ちの方と付き添いの方1名まで半額。
※前売券の購入は、前日の23:59 受付完了分まで。
<大阪>
一般1,600円(1,800円)
大高校生1,300円(1500円)
※中学生以下、障がい者手帳等をお持ちの方と付き添いの方1名まで無料。
※大阪市内在住の65歳以上の方も一般料金が必要。
※カッコ内は当日券です。
東京会場では、待ち時間軽減と混雑緩和のために、日時指定入場制になっています。(大阪展では「日時指定」はありません)
指定された入場時間枠が6つあり、事前に入場時間を選んでチケットを購入します。
入場時間枠
1 |
9:30 ~ 10:30 ※1月・2月は9:00 ~ 10:30 |
2 |
11:00 ~ 12:30 |
3 |
13:00 ~ 14:30 |
4 |
15:00 ~ 16:30 |
5 |
17:00 ~ 18:30 |
6 |
19:00 ~ 20:00 |
指定日時の時間枠内であれば、いつでも入場が可能です。
入替制ではありません。
入場後は、時間制限なく、閉館時間まで鑑賞できます。
開館、閉館時間が異なる日もありますので、公式サイトでご確認ください。
前売券が指定数に達した日時の当日券はありませんが、余裕があれば、当日券の販売もあります。
会場外にあるチケット売場の貼り紙で、当日券のある時間枠が確認できます。
私が到着した12時40分頃には、当日券の販売があったこともあり、当日券購入のための列もできていました。
当日、ふらりと行って空きがあれば当日券で鑑賞するのもいいでしょうね。
ただ、前売り券が前日まで買えますから、時間の予定を立てるためにも、料金にしても前売り券がお得かと。
前売りで2,500円って、けっこう強気な料金です。
お安くはないわ。
一瞬、行くのやめようかと思ってしまいましたもの。
一瞬ですけどね。一瞬。
それでも、急に行けなくなったからといって、日時の変更やキャンセルには対応していないそうです。
すさまじい天候不良や、交通機関の遅れが起こったりした場合は、どうなるのでしょうね。気になるところです。
幸い、私が行った11月1日は、気持ちのいい晴れでした。
公式サイトでは、入場開始時間の直後は、入場待ちの列ができて混雑しやすいからと、時間枠の後半に行くことをすすめる文面があちこちにありました。
そうは言われても、入れる時間になったらすぐにでも入りたいと思うのがファン心です。
私の場合、13時からの入場枠で、20分ほど前に会場に到着しましたが、既に10mばかりの入場待ちの列ができていました。
他の方々も、考えることは同じなんですね。
「結局並んで待つんじゃん」
私よりも少しあとに来た二人組が、そんな風に話しながら、列に並んでいました。
誘導の方の話ですと、
「開場後40~50分過ぎると、入場待ちの列はほとんどなくなり、待ち時間なしで入場できます」
とのこと。
入れ替え制ではありませんので、入ってからの時間制限はありません。
私は好きで入場開始時間前から並び、結果20数分待ちました。
待ち時間ゼロで入場したい方は、案内されているとおり、時間枠の後半を狙って行くのが正解のようです。
後から考えて、待ち時間なしのほうが、賢い時間の使い方だったように思いました。
フェルメールは逃げませんからね。
逃げませんが、会期中、一部展示替えがあるということで、観たい作品によっては、いつ、どこに行くのかは検討が必要です。
公式サイトでは少しわかりにくかったので、整理してみました。
日本初公開の3点含め、東京では、同じ日に最大8点、展示替えのある12月21日から1月8日の間は、7点、大阪では、6点の作品を鑑賞できます。
フェルメールって誰?
17世紀のオランダを代表する画家で、とっても人気のある人です。
フェルメール展の開催を知り、ツレに「一緒にいかが?」と誘ってみたのですが、「誰?」と聞き返されたので、ざっくり説明してみました。
フェルメールの名前を知らなくても、この絵はご存知の方も多いと思います。
『真珠の耳飾りの少女(青いターバンの少女)』
この絵を描いた方です。この少女は今回は来日していませんが、ツレもこの絵は知っていると言っていました。
美術に詳しくない私も、テレビの特番で紹介されたのを見てから、彼の描く「光」に魅了され、ファンになった一人です。
9/35 日本美術史史上最大のフェルメール展
フェルメールの作品が1度に8枚も!!!?
そんなことできるんだ
開催を知って最初に思ったのはそんなことでした。
フェルメールをご存じない方には、「8」という数字が大きいのか小さいのかぴんと来ないかもしれませんね。
現存する作品が、30数点と言われる謎の多い約400年前の人気画家の絵が、8点、1度に見られるなんて・・・
これはすごいですよ。
知らなくても、興味本で行ってみてもいい価値がある数字だと思います。
開催直前に追加展示が発表され、1点増えて、なんと9点が上野にやってくるというじゃないですか。
「9/35」
本人に関しても作品に関しても、あまり詳しいことが分かっていないフェルメール。
現存する作品の中でも何点かは真贋が議論されていると記憶していました。
つまり、「フェルメールが描いた作品だ」という人と、「別人が描いたものだ。贋作だ」という人がいるようなんです。
この度のフェルメール展では、でかでかと「現存する作品数35」となっていました。
はてな。
知らない間に議論に決着がついていたのか?と思ったら、そのあたりはまだ決着はついていないと、展覧会でもらった小冊子の終わりにきちんと書いてありました。
行って来ました!
美術館の周りには、巨大なフェルメール作品(ポスター)が何枚も飾られていました。
本物よりも数倍ドデカイので眺めがいがあり、記念撮影によさそうです。
ツレが一緒に行かれなかったので、私は記念撮影ができず残念でした。
遠近法を使えば、ー牛乳を注ぐ様子を見つめる女ー
みたいな写真が撮れたかもしれません。
入場すると、全員に小冊子になったガイドブックと音声ガイドが配られます。
冊子には、展示されている全作品の解説が100~150字ほどで解説されています。
文字だけで画像はありません。
音声ガイドは、要所要所ガイドマークがついている作品、10ほど解説してくれます。
ナビゲーターは女優の石原さとみさんで、ナレーターは大場真人さんです。
耳元から聞こえる石原さんの声は、少し緊張気味で、堅い印象を受けました。
石原さんご本人の感想なども交えてのガイドでしたよ。
フェルメール作品の前に、彼と同時代のオランダの画家たちの作品から観ていきます。
“17世紀オランダ絵画の広がりと独創性”が楽しめる展示だそうです。(小冊子より)
展示室に進むと、小冊子で解説されている作品番号と展示の順が一致しません。
バラバラです。
あれれ?はじめは思ったのですが、決められた順路はないそうで、比較的自由にすいているところからご鑑賞くださいとの学芸員さんの案内が聞こえ、納得しました。
それから、音声ガイドが聞ける作品の前は、どうしても人の流れが遅くなります。
私は、先に小冊子を展示部屋ごとに一気に読んで、音声ガイドも聞いて、それから鑑賞することにしました。
耳からの情報と、冊子の解説と、目の前の本物の作品と、人の流れと自分の心地よいタイミングで鑑賞できました。
展示概要
1 オランダ人との出会い | 肖像画 |
2 遠い昔の物語 | 神話画と宗教画 |
3 戸外の画家たち | 風景画 |
4 命なきものの美 | 静物画 |
5 日々の生活 | 風俗画 |
6 光と影 | フェルメール |
印象に残った作品です。
肖像画
『洗礼者ヨハネの斬首』
レンブラント周辺の画家(1640-1645年頃)
肖像画展示の部屋の中に、突如斬首が現れます。
しばらく立ちつくしてしまいました。
静物画
『野ウサギと狩りの獲物』
ヤン・ウェーニクス(1697)
以前、何かの展覧会で、狩りの獲物を主題とする作品がずらりと並べられた展示室がありました。
あまりにもリアルな描写の作品に囲まれて、なんだか怖くなり、逃げるように次の展示室に移動したことを思い出しました。
ここでは展示が1点だったので、逃げることなく鑑賞できました。
逆さになった野ウサギの毛並み、1本1本の描写が素晴らしかったです。
“触(さわ)れそうなほど”と小冊子にも書いてありましたが、思わず手を伸ばして触れてみたくなってしまうほどの毛並みでした。
奇跡の部屋~フェルメールルーム~
フェルメールの作品8点をひとつの部屋に展示した奇跡の部屋、フェルメールルーム
絵が完成すれば、遅かれ早かれ注文主の手元に渡るでしょうから、描いた本人すらも見たことがなかったであろう特別な空間です。
2階から1階の展示室に向かうと、スライドを見ながら少し休憩できるスペースがありました。
はやる気持ちを抑えながら、明るく照らされた白い通路を抜けたその先に、待っていました。
フェルメールの作品たちです。
作品の持つ空気感、展示による効果、鑑賞する人の熱意、
すべて混ざり合い、他の部屋よりも少し緊張感の漂う空間でした。
マルタとマリアの家のキリスト(1654-1655年頃)
初鑑賞。
フェルメールの作品では最も大きく、聖書の一場面を描いた唯一の作品です。
キリストの話に聞き入るマリア(左下)と、給仕でせわしなく働くマルタ(中央)。
マルタがキリストに言います。
「聞いてばかりで給仕をしないマリアに手伝うように言ってください」
キリストは「マリアは良いほうを選んだ」と答える。
とまあざっくりですが、そのような場面だそうです。
私は、マルタの表情に惹かれました。
「んーーーもうー」
鼻息が聞こえてきそうではありませんか。
ワイングラス(1661-1662年頃)
日本初公開
女性がワインの最後の一滴を飲み下す瞬間に時が止まっています。
男性は、空のグラスにワインをつぎ足そうと待っているのだそうです。
永遠に空になることのないワイングラスです。
リュートを調弦する女(1662-1663年頃)
初鑑賞。
この作品に限りませんが、私の中では、フェルメールの作品で描かれる女性は、一部を除いて(ここ重要)あまり可愛いとか、美人だとか思っていませんでした。
印刷物で観ていたときの感想です。
それが、今回の展覧会では、急に女性たちが可愛らしくみえてきました。
この作品をみてから、あれ?女性がこんなに可愛かったっけ?と、不思議な感覚がありました。
真珠の首飾りの女(1662-1665年頃)
再会。
壁の白い光にとてつもなく惹かれてしまいます。
しばらく壁を見つめては、思い出したように女性にも視線を送ります。
壁にみとれてしまうのですが、女性もよくよく眺めておかないと、なんだか損した気分になりそうで、ちらっとみては、壁の光を再び見つめる、そんなことを繰り返していました。
女性の表情と仕草も、記憶していた以上に可愛かったです。
この作品、好きです。
手紙を書く女(1665年頃)
再会。
こんなに美人だったっけ?
そんな感想がはじめに浮かんできました。
目線が合いそうで合ったような合わないような。
この作品だと、素直に人物に視線が行きます。
手紙を書く婦人と召使い(1670-1671年頃)
再会。
華やかなようで地味なようで、光が差し込み、明るいようで明るくなりすぎない全体的な色合いが好きです。
窓からの光が当たっている婦人の袖は、近づいてみると、べたんべたんと塗り方が平面的なように見えます。
少し離れると、「光が当たっている袖」になります。
テーブルクロスにも、婦人の袖に当たっているような光が差していてもよさそうだけど、それほど光は当たっていないよう。
さてはて、やっと左側の窓の、光が差し込むステンドグラスの上部に、婦人の袖に差し込む強い光の入り口があったことに気がつきます。
なんて綺麗な作品なんでしょう。
赤い帽子の娘(1665-1666年頃)
日本初公開
ピンぼけしているのだそうです。
“女性の姿はぼやけて焦点が合っていない”(小冊子より)
女性だけでなく、全体的にはっきり見えない感じに、なんともい言いようのないモヤモヤ感が浮かんできます。
展示の中でも唯一、カンヴァスではなく板に描かれた作品で、サイズもひときわ小さい作品です。(23.2×18.1cm)
10cmほどはありそうかという幅の広い額に目線が行きました。
おねいさん。いったいどんな帽子を被ってらっしゃるの?
牛乳を注ぐ女(1658-1660年頃)
初鑑賞。
今回の展示でおそらく一番有名な作品でしょう。
人垣も一番多く、離れたところからしばらく眺めて、時間はかかりましたが(順番)近くからも見つめてきました。
子どもの頃から知っていた作品のせいか、メイドは年上で中年の女性のようなイメージをずっともっていました。
今回、初めて本物に会ってみて、メイドは思っていたよりずいぶん若いのかもしれないと思いました。
そして、ふと気がつきました。
いんや。自分が年をとったのだなと。
今回、メイドのスカートの赤に、初めて意識が向きました。
身につけている衣服の、上から、白、黄色、ブルーばかりが印象に残っていて、スカートの赤がこんなにきれいだったのかと驚きました。
ブルーはもちろん綺麗です。
愛らしさとかわいらしさを強く感じ、ほっこりとした満足感で満たされました。
ひとり勝手に牛乳を注ぐタイミングを予想します。
「牛乳を注ぎ終わる女」に1票です。
想像が膨らみますね。
素敵でしたよ。
『取り持ち女』
『恋文』は、鑑賞していません。
大阪展・・・遠いよぉ。
売店で思うこと
ポストカード売場の最前列で、どれを買おうか迷っていらしたのでしょう。
ずいぶん長い間、動かない方がいらっしゃいました。
絵画の前でも、長い時間、じぃっと魅入っていたのかもしれません。
その方の後ろから、欲しいポストカードに手が届かない私は、じっと待っていました。
そんな私の後ろから(それこそ手が届かない)、二人組の方が話していました。
「ここはちっとも動かないね」
はい。そうですね。
言葉にとげとげしさはまったくなく、ただ、その場での事実を口にされただけでしょう。
「そうだね(笑い)」
と、相槌を打つ方の声色も穏やかでした。
買うか買わないか迷うなら、一歩下がって、せめて二列目くらいから眺めて迷うようにしよう。
閑散とした売場ではともかく、人気の展覧会で、まして混雑した売店ではそうしよう。
自分は気をつけよう。
そう思った次第です。
そして、自分へのお土産は、ポストカードとクリアファイルです。
イェイ。
もう1枚のフェルメール
フェルメール展でもらった小冊子には、フェルメールの全作品の所蔵館がわかるマップが掲載されていました。
“個人蔵”となっている36番、『聖プラクセデス』が、上野の森美術館のすぐ近く、国立西洋美術館の常設展で鑑賞できるかもしれません。
真贋のほどはまだ議論されているようで、今回の展覧会「9/35」では圏外の36番になっていますね。
「フェルメールかもしれない」なら、行ってみてもいいかもしれないじゃありませんか。
私が以前常設展で鑑賞したときは、ずいぶん近い距離でみることができで、こんな身近に鑑賞できていいのかしら?と驚いたほどでした。
今はどう展示されているのでしょう。
自分が生きている間に、真贋の決着がつくのかどうかもわかりませんけれど。
西洋美術展のホームページで、「所蔵作品」の「作品検索」で調べると、その日に展示されているかどうか確認できます。(2018.11現在展示中)
美術館の所蔵作品ではないためか、「常設展」のページでは紹介されていません。
フェルメール展、行ってよかったです。
以上、最後まで読んでいただき、ありがとうございました。