うちの本棚

星ちりばめたる旗(小手鞠るい)|こぎ父の読書日記

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小手鞠るいの『星ちりばめたる旗』を家の本棚にしまうこぎ父です。

三度の飯より本を愛するこぎ父(こーぎーの父親(80歳))より、読書感想文が届きました。

今回ご紹介するのは、小手鞠るいの『星ちりばめたる旗』(ポプラ社 2017年)です。

星ちりばめたる旗を読んで

いつも光村図書出版の児童文学雑誌(「飛ぶ教室」こーぎー補足)―季刊号で優しい爽やかなエッセイ、絵物語を載せているアメリカ在住の著者。

今回の本は、世界地図帳、日本地図帳、そして世界史年表、日本史年表を手許に置いて読み進めた。

何しろあっちへ行ったり、こっちへ来たり、年代が上ったり下がったり、さすがアメリカ在住の著者の行動、考察範囲は広く深い。

アメリカ在住の日系三世の末孫娘が、その祖父母、その子供たち、孫たちの三代を語る。

酷しい日系アメリカ人のファミリーストーリーである。

ニューヨークの美術館で目にした、ジャスパー・ジョーンズという画家の「旗」という作品、蜜蝋を溶かした顔料が、青地に白の星々から、赤と白の横筋から幾筋と垂れ下がっている古い星条旗。

この旗の下で織りなされる日系移民の酷しい歴史。

大政奉還後、明治政府は急速に進めようとした産業化、軍事化により、徴兵制も強化され、長男以外は兵役を免かれず、特に地方の農家の次男以下は、日本にいても未来は貧乏だけ、海外で新天地を求める者も多く、政府も海外への移民(実質的には棄民だった)を奨励した。

こうした中、岡山から17歳のひとりの男がアメリカを目指した。

奴隷船のようなおんぼろ船のすぐ頭の上の天井にぶつかってしまうような蚕棚ベッドに揺られ、1ヶ月余り、栄養不足で霞んだ目でふんどし一丁、新天地についたのだ。

それまで労働力として得られていた中国人の代りの労働力としての第一歩は、鉄道建設工事の肉体労働(鉄道ボーイ)。

夢に描いた未来とはほど遠い出発。

そして、農業ボーイ、大農場の季節労働者として朝から夜までの肉体労働。

やっとスクールボーイに。

白人の家に住み込んでの家事労働。

アメリカの女性に酷使される身分、蔑視されながらも、それでも教会へ通って英語を身につけて。

移民は土地所有が認められていなかったから、借地での農場作り。

やっと古郷から妻になる人を呼び寄せることが出来て、女学校出の妻と新家庭、子供も生まれて。

日本人移民は勤勉、それが却って白人の労働力を奪うというアメリカ人の複雑な反日感情。

相俟あいまって、その前後からの日本とアメリカとの間の政治経済情勢の悪化、ますます増長する日本移民への締め付け。

そして、真珠湾攻撃、太平洋戦争勃発。

長男が、反日アメリカ青年による暴行により大怪我、脳損傷、廃人同様となる。

それまで経営していた大農場の取り上げ、強制退去、強制移住、収容所への収容。

こうして家族もバラバラに。

以前、アメリカ旅行の折に訪ねた元強制収容所の跡地がまざまざと思い出される。

アリゾナの何もない砂漠地、背後の山々にも草一本見れず、川もなし。

そんな処で、数百人の人達が自分たちで食べるものを作り、井戸を掘り、とにかく生きた。

想像しただけでも苦しい。

主人公の次男は、アメリカ人として生きるべく軍隊入り。

イタリアの戦線で勇敢に戦い戦士。

広島、長崎への原爆投下、終戦。

やっと家族の元に戻った主人公は、最早もぬけの殻、生けるしかばねと化して自殺未遂の繰り返しの末、廃人同様となって生涯を終る。

最も可愛がっていた末娘を、子供のなかった自分の妹に養子に出して、その娘が、満州から引き上げる船が沈没して亡くなったのも知らずして。

このファミリーヒストリーを語った日系三世の孫娘以外の身内の人たちの物語も、この本筋の合間に、それぞれ得たアメリカ人としての幸せな今の様子が見える。

そして、祖父母への思い、日本への強い思い、日本語への憧れも。

こんな思いでアメリカ人として生きている人も大勢いるのだろう。

同じくこの若者の『ある晴れた夏の朝』(偕成社)も、興味深い内容である。

出自の異なるアメリカの8人の高校生が、広島と長崎に落とされた原爆の是非について討論する。

太平洋戦争の歴史の過程を辿りながら。

こうしたテーマを討論出来る雰囲気はやっぱり自由の国アメリカの為せる業か。

日本ではムリか。

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