先日、上野のフェルメール展で、ついグッズを買いすぎてしまった筆者です。
ひとりで楽しんで満足してお土産(すべて自分用)で散財してしまいました。
『ひとりで楽しんでしまった』ツレに対する申し訳なさがあったので、今度はこっそり、出かけてきました。
ピエール・ボナール展
ツレに内緒で出かけてしまったので、感想を大声でしゃべれません。
素人のつぶやきですが、よければお付き合いください。
ピエール・ボナールって誰?
フランスの画家 ピエール・ボナール(1867-1947)
ナビ派の一員。
「日本かぶれのナビ」と言われるほど、日本画の影響を強く感じる作品多数。
オルセー美術館の歴代企画展入場者数「第2位」を記録。
2015年51万人。ちなみに第1位は2014年のゴッホ展だそうです。
わたくし、「ナビ派」と聞いてもピンときませんでした。
いくつかの説明文を読み、「そういう芸術家グループ」だったという解釈で落ち着きました。
「そういう」が「どんな」かを理解するにはまだ至っておりません。
ボナール。私には、ごく最近覚えた名前でした。
2018年春に横浜美術館で開催された「ヌード」展でみた『浴室』です。
作品が好みかどうかで言えば、
別になぁ・・・
くらいにしか思いませんでした。
(あくまで個人の主観です)
だって、なんか変なんですもん。
(あくまで個人の主観です!)
それなのに、なぜか印象に残っていたのです。
私にとって今回の展覧会は、興味が冷め切らないうちの絶妙なタイミングでの開催でした。
印象に残った展示。語らせて
『フランス=シャンパーニュ』(1891)
ポスターです。
おしゃれでかわいい。
好みです。
「センスがいい」って、こういうことなのでしょうか。
1891年に、パリの街中に貼り出されたとのことです。
そんな光景、眺めてみたかったです。
ボナールの画家としての第一歩となった作品だそうで。
同じ時代を生きていたら、さっそくファンになっていたかもわかりません。
『浴盤にしゃがむマルト』(1908-10)
写真です。
のちに結婚して妻になる女性・恋人マルトの入浴シーン。
カメラの進歩やら現像技術の進歩やら、写真を撮ることが身近になった時代だったようで、ボナールもたくさん身近な人の写真を撮っていたそうです。
何気ない日常を切り取った1枚は、それだけでちょっとしたアート作品のようでした。
構図に惹かれるのか裸の女性に惹かれるのかわかりません。
ボナールは写真家ではありませんから、あくまで「写真」であって、売り買いの対象となる「作品」ではなかったのでしょうけど、値段がつきそうな写真なんです。
センスのよさ
を感じる1枚です。
約10年後の作品で、写真の構図とよく似た
『浴盤にしゃがむ裸婦』(1918)
も展示されていました。
トクトクトクトクトクトクトクトク
絵画からは、お湯を桶にそそぐ音が聞こえてきそうでした。
写真からは感じることはなかったのに、不思議な感覚でした。
『アトリエのベランダにて、パリ』(1902-03)
こちらも写真。
ボナール本人と親戚の子どもの顔が構図の中央、たてに三つ並んでいます。
誰が撮影したのかわかりません。
キメているんだかいないんだかわからないポーズの3人の様子から、なんだかとても
ボナールの自然体
を感じる1枚でした。
なんかこの写真よくない?コレコレ!
と、ツレがいなかったのでひとり、心の中で指差していました。
『バラ色の裸婦、影になった頭部』(1919年頃)
裸婦のモデルは当時恋人だったマルトではなく、別の女性だそうです。
ボナールの浮気相手。
気になるじゃありませんか。
その顔。
その期待を素晴らしいほどに砕いてくれます。
題名の通り、「バラ色」の裸体がまぶしいくらいに明るい色彩で目をひかれたその後に、顔を見ようと目線を上げると、こちらを見つめる「影になった頭部」
暗い。
こっちを向いているのだけど、
暗い。
明るい裸体と壁が馴染みあうような空気感の中に現れる影の顔。
顔だけ暗いのはものすごく不自然なのに、不自然なのに、違和感がない。
違和感だらけなのに、馴染んでいる。
なんじゃこりゃぁ
混乱しながらも、しばらく眺めていました。
ボナールが描いた裸婦は、ほとんどがうつむいていたり体だけだったり、顔がぼんやりとしていてあまりはっきりとしないそうです。
こんなにも女性はこちらを見つめているというのに、顔はぼやけてよくわかりません。
何を表現しようとしていたのでしょうか。
『ボクサー(芸術家の肖像)』(1931)
ボナール64歳の肖像画。
拳を握りしめた男性の上半身。
服は着ておらず、その顔と拳は赤く影になっています。
肖像画だというのに、顔が暗い。
しかも、赤い。
見ているとちょっと怖いくらい。
絵画で表現されるあれこれを読み解く知識や感性がないからなのでしょうか。
この絵を描いた人
に興味が沸いた瞬間だったかもしれません。
『花咲くアーモンドの木』(1946-47)
遺作です。
巨大な作品が多く並んだ最後の展示室の出口横。
装飾のない白い額におさめられた小ぶりな1枚。
遺作と知らずにいたらスルーしていたかもわかりません。
この絵で人生を終えた画家がいたんだな
生ききったんだな
そう思うからこそ、惹きつけられたのかもしれません。
ピエール・ボナール展
オルセー美術館特別企画
ピエール・ボナール展
2018年9月26日(木)~12月17日(月)
六本木 国立新美術館
一般:1,600円
大学生:1,200円
高校生:800円
高校生が無料で観覧できる期間があったよううです。
「うらやましいぜ・・・」
思っても口にはできないお年頃。
一般1枚で当日券を購入です。
外から入ると気分が上がる
六本木にある国立新美術館。
東京メトロ千代田線の乃木坂駅から行くと、出口直結で雨でも雪でも濡れずに会場に入れるのが魅力です。
今回、お天気が良かったので日比谷線の六本木駅を利用しました。
公式サイトで案内されていた「4a出口」が工事中だったため、「7出口」から地上に出て、少し歩いて会場に。
ガラス張りで波打つような外観を眺めると、特別な場所に来た感じがして少し気分が良くなります。
建物の前の大きな木もいいんですよね。
なんか好きです。
何の木かご存知の方がいらっしゃったら、教えてください。
混雑状況
平日の朝、会場直後の時間で人はまばら。
人の流れのタイミング次第では、一つの作品をひとり占めできることもありました。
広い展示室の中央に椅子が置いてあり、休憩しながら鑑賞できたのがよかったです。
窮屈感なく、ほどほどの賑わいも感じられる空間でした。
入場者10万人突破
11月19日に記念のセレモニーが行われていたようです。
10万人目に当たった方には、展覧会図録とトートバックが贈られたそうです。
「うらやましいぜ・・・」
思っても言うまい。思っても言うまい。
あ、活字にしちゃってる・・
本物を味わうためには、体力も必要
六本木に行ったその日、実は痔のため、お尻が少々不調でした。
家を出る前に薬を塗り忘れてしまったせいです。
展示室に椅子があって本当に助かりました。
よかったよかった。
失礼。
ボナールに戻ります。
よくわかっているようでわかっていないボナールのこと。
恋人であったマルトの友人と、愛人関係にあったとか。
嫉妬したマルトに結婚を迫られて、ついに結婚したとか。
そんなマルトは、出会ったときには偽名を名乗り、年を8歳サバ読んでいたとか。
ふたりが結婚した後、愛人関係にあった女性が自殺したとか。
その後、浴槽に横たわる構図の裸婦を描くようになったとか。
マルトは一日中お風呂に入っていたらしいとか。
ボナールだけでなく、妻のマルトにも興味が沸いてきます。
もっともっと知ってみたいと思える画家がひとり増えました。今回買ったお土産は、ポストカードとチケットファイルを1枚ずつ。
ミュージアムショップはグッズが盛りだくさんで、眺めるだけでも楽しかったです。
以上。最後まで読んでくださりありがとうございました。