ツレのおばあさんの命日の前日。
がんっ
どこかでなんだか変な音がしました。
こぎ父に怪我はなかったようでして、ご自分でわっせわっせ片づけてくださっていました。
そうです。
今回やらかしてしまったのはこぎ父でした。
ツレとらっこが買って来たお花を花瓶に生けようとして、どういうわけかそんな風になってしまったようです。
手元が滑ったのか、不安定なところに置いてしまったのか。(たぶん後者)
こぎ父は詳細を言いませんでした。
実はその花瓶、普段は大事に倉庫にしまっていて、いざという時にだけ使うお気に入りの大事にしていた花瓶だったそうです。
ええっと?
誰のなんだって?
つまりはですね、こぎ父のお母さんの命日に花をお供えしようとしたこぎ父が、こぎ父のお母さんのお母さんとお父さんの金婚式の記念の花瓶を割ってしまったのだそうです。
あちゃぁ……
こぎ母のおばあさんは誰かが瀬戸物を壊してしまうと、
「いいんだぁ。壊さないと瀬戸物屋さんが困ってしまう」
みたいなことを言って失敗した人を和ませていたんだなんて話を何度からっこもしてもらいましたが(ええ。壊しましたさ…何度も)
この時はそのエピソードは出てくることなく、こぎ父の失敗を
「私じゃなくてよかった」
と笑って返していました。
こぎ母は花がお好きな方なので、こぎ父が倉庫にしまう前、こぎ母が病気をする前はよく使っていたんじゃなかろうかと邪推するらっこでした。
わかりませんけれど。
「人に壊されるより、自分で壊しちゃったんだからよかったんだよ、それで」
らっこと二人でいるときの、ツレの感想はクールでした。
こぎ父に直接は言いませんけどね。
うん。
たぶん。
らっこもそうだなって思いました。
いつもこぎ母を見守ってくださっているこぎ父ですが、こぎ父だって見守ってもらう側でいてもおかしくもなんともないお年頃なのでした。
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思い出のあるものを失うということは、なんだか胸がきゅんと締まります。
壊れてしまっても、誰も怒らないしなにも困らない。
だけどちょっぴり、
きっと、
悲しい。
一緒に悲しんだかもしれない人たちは、もう、いない。