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母の前で(ピエール・パシェ著)|こぎ父の読書日記

ピエール・パシェの『母の前で』を本棚にしまうこぎ父です。

三度の飯より本を愛するこぎ父(こーぎーの父親)より、読書感想文が届きました。

今回ご紹介するのは岩波書店から出版されている『母の前で』ピエール・パシェ著(根本美作子訳)になります。

『母の前で』を読んで

この本は母(母でなく或いは父でも)を長い間介護していてその疲れの中にある人、或いは、その長い介護の末見送った経験のある人に読んで貰いたい。

 

今、その最中にある人は、その母或いは父への距離を近くするだろうし、見送った人は、その人への思い、或いは悔いを深くするかもしれない。

 

人間の生命の神秘、特に、命の終わり方について、思いを新たにするだろう。

 

終章近くの「どのように脳は死ぬのか?」では、宇宙船に搭載され、その任務を終えることになる超強力コンピューターHALを例に、その終末を語っている。

 

HALをシャットダウンし、電源を切る際一つ一つ、コンピューターの「メモリーブロック」を外していく。

 

そうすると、コンピューターは身を守るためにしゃべり、懇願する。

 

「あなたはわたしの精神を壊しています・・・わからないのですか?・・・こどもに戻ってしまう・・・何でもなくなってしまう・・・」と。

 

そしてついに言葉が途絶えたようになる。

 

でも、機械的に生気を失った調子でしゃべり続ける。

 

「わたしは・・・ハル・・・わたしは・・・最初の・・・レッスンの・・・準備が・・・整い・・・ました。」

 

そして、最後のユニットを引き抜いた。

 

するとHALは永遠に沈黙した。

 

これが母(或いは父)の命の消えて行く過程と似てはいないだろうか。

 

そうなる前に、もっともっと、諦めないでその人と語り合うべき。

 

例えその人から反応が無くても。

 

決して自己満足ではない!

 

そうしないと悔いが残る筈。

 

そんなことをこの本から学んだ。

 

10年前、母を数十年の介護の末見送った私の感想です。

母の前で

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ピエール・パシェ
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