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出来事は忘れても感情は覚えている、らしい(2)|らっこ

こぎ父がこぎ母に、こぎ母が大好きだった恩師の訃報を伝えたお話です。

しばらくの間、こぎ母には内緒にしていたこぎ父でしたが、こぎ母に伝える決心をしたようでした。

<前回の話>

こぎ母が、ショートステイから帰って来ましたよ。

こぎ父がどんな風に伝えていたのか、らっこは台所で夕飯の支度をしていたのでわかりません。

 

ワトソン先生は絵を描かれる方で、こーぎー家には先生が描いた絵が何枚も飾ってあります。

こぎ父の声が向こうの部屋から漏れ聞こえてきました。

 

「ほら、この絵だよ」

「あの絵だよ」

 

こぎ母に、家のあちこちに飾ってあるワトソン先生の絵をエピソードを交えて話している様子でした。

 

それではご飯を食べましょう。

台所にこぎ母が来る前に、こぎ父がこそっと

「お母さんに話したから――」

と言ってくださいました。

 

こぎ母の様子はどうかしら。

激しく動揺しているふうでもなかったので、ひと言でいうなら安心しました。

これまでだって親しい人たちをたくさん見送ってきたのでしょうから、受け止めるしかないですもの。

 

 

 

ちょっといつと答えようかなって、一瞬考えたみたいでしたけれど、そうですね、今日だったんですね。

こぎ父なりのお考えがあってでしょう。

こぎ父なりの事実を隠す基準があるのかな…

 

結局それ以上、こぎ母が深く問い詰めることも取り乱すこともありませんでした。

食事もすっかり終えて、これで今日が終るかな……と思っていた頃、電話が鳴りました。

 

続きます

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