こぎ父の隣で、こぎ母が尋ねました。
正面に座るツレのことをまっすぐに見ながら。
「お父さんはどこにいるの?」
その表情はどこか不安げです。
「おとうさん」「おかあさん」と
呼び合っているこぎ父とこぎ母。
最近は、こぎ父の隣で「お父さん」を
探すことが日常になってしまったように感じます。
こぎ母が尋ねる「お父さん」が、
「こぎ父」
のことだと思って言葉を返すと、
話が嚙み合わないことがありました。
そのうちに、すでに亡くなっている
「実のお父さん」
のことを探していることもあったりします。
ついこの前も、探していたのは
「実のおとうさん」
でした。
今日の「おとうさん」は誰でしょう。
ツレが尋ねます。
ツレは、間違いのないように尋ねます。
その時らっこは不思議と、
こぎ母が探しているのは
「こぎ父・おとうさん」
のことだろうな感じていました。
冷蔵庫からヨーグルトを取り出しながら
「左向いてみてくださーい」
と声を掛けました。
(食後に食べるヨーグルトの準備中)
聞こえなかったのか華麗にスル―。
うんうん。
いつものことです。
いつものこと。
ツレが辛抱強く尋ねます。
「何おとうさん?」
自分の質問に返ってきたツレから質問に、
徐々に焦点が合わなくなるこぎ母の目線は、
明らかに戸惑っているように見えました。
やっとなにかの回路がつながったのか、
「こぎ父・おとうさん」だと
こぎ母が断定できました。
ずっとこぎ母とツレのやり取りを
静観していたこぎ父が
ついに登場。(最初からいた)
こぎ母の手にご自分の手を重ねて
落ち着かせるように話すこぎ父。
こぎ父も、
だいぶお酒が回っていたのかもしれません。
ん?
なんだかこぎ母の空気が
いつもより
ピンク色に見えたのは
らっこだけだったのかもしれません。
こぎ父とこぎ母、
59回目の結婚記念日の、
前日のこぎ母でした。
読んでくださりありがとうございます。