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その後の福島 原発事故後を生きる人々(吉田千亜)|こぎ父の読書日記

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吉田千亜の『その後の福島 原発事故後を生きる人々』を家の本棚にしまうこぎ父です。
三度の飯より本を愛するこぎ父(こーぎーの父親(80歳))より、読書感想文が届きました。

今回ご紹介するのは、吉田千亜の『その後の福島 原発事故後を生きる人々』(人文書院 2018年)です。

『その後の福島 原発事故後を生きる人々』を読んで

JR常磐線は、東日本大震災による東京電力福島第一原子力発電所の爆発事故以来、一部は再開したものの不通のままで復旧の具体的スケジュールも全く見えていない。

もう60数年も前、まだ雪の残っている奥信濃から仙台の大学に入学すべく、この常磐線で行ったのを憶えている。

長野を夜行列車で発ち、上野駅地下の食堂で朝食を食べ、朝一番の普通列車でトコトコ・・・。

海の無い信濃からの旅は、途中から太平洋も眺められそれなりの嬉しい景色ではあった。

仙台に着くのは午後2時ごろだったか。

 

今は、そんな旅は望めない。

 

この地域出身の同期生もいて、長じてそれぞれの会社勤めを終えた後、故郷に戻って生活している人もいる。

正にこの本の舞台の福島県相馬市・南相馬市に今住んでいるS君、N君。

この二人、東京で同期会などある時は、S君は一部開通した路線で一旦仙台に行き東北新幹線で、N君はバスで福島まで出て一泊、翌朝新幹線で上京するとのことであった。

 

この本にあるように 自分の責任ではないのに、このような不自由な生活を余儀なくされている訳である。

この二人はまだ良い方で、その故郷が避難指示区域に指定されて、自分の責任ではないのに、他所に住居を求めざるを得ない人たち。

 

この本は正にこの人たちへの渾身のルポルタージュである。

 

先祖代々その土地で採れるキノコや山菜などの天の恵みでその季節毎の食べ物で平穏に暮らしていた人たちが、全く見ず知らずの他県に避難させられ、子供たちも慣れない土地でいじめなどにいながらも一生懸命に生きてる姿、

本来ならゆっくり残りの人生を楽しめた筈の老人のさびしい生活、

福島県というだけの風評被害、

除染の実態、

国、県、東京電力のまやかしの対応、

借上住宅の打ち切り・・・

採り上げられている問題事項をひとつひとつ、

もし自分が当事者だったらどうしただろうか、

今どう行動するだろうかと自問自答しながら読み進んだ。

 

原発事故が再び起こらない保証は全く無い。

全国あちこちで停止中の原発の再稼働の動きがある昨今、

この本にある福島の人たちの苦しみを日本全国民が共有し、再確認する必要があると考える。

 

来年の東京オリンピック成功の名の下に、大幅に遅れている復興、復旧工事、正にこの本の帯に記されている

「オリンピックの忘れもの」を

改めて認識させられた立派な本だった。

作者のルポルタージュのご苦労に感謝したい。

その後の福島: 原発事故後を生きる人々

その後の福島: 原発事故後を生きる人々

吉田 千亜
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